Cool Struttin’ / Sonny Clark

ソニー・クラークの代表作であるばかりでなく、ハードバップを代表する名盤。

Cool Struttin' / Sonny Clark
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Album Data

クール・ストラッティン / ソニー・クラーク
Cool Struttin’ / Sonny Clark

Track listing

  1. Cool Struttin’ – 9:23
  2. Blue Minor – 10:19
  3. Sippin’ at Bells (Miles Davis) – 8:18
  4. Deep Night (Charles Henderson, Rudy Vallée) – 9:34
  5. Royal Flush – 9:00 *
  6. Lover (Lorenz Hart, Richard Rodgers) – 7:01 *

Except where otherwise noted, tracks composed by Sonny Clark.
* Bonus tracks on CD reissue:

Personnel

  • Sonny Clark – piano
  • Jackie McLean – alto saxophone
  • Art Farmer – trumpet
  • Paul Chambers – bass
  • Philly Joe Jones – drums

Recording Data

  • Recorded January 5, 1958.
  • Produced by Alfred Lion.

こんな方におすすめ

全ての人におすすめできる快作。結構激しい演奏もあるが、うるさく感じる事はない。いかにもジャズらしいジャズなので、はじめてジャズを聴くという方に特におすすめである。ジャケットを含めてとても有名な1枚。

さらっと聴いた感じ

全体的にもの悲しく哀愁を帯びているのに、なぜか軽快でクール。ちょっと都会的な印象もある。そしてとにかくシンプルなメロディとリフレインがとっつきやすい。テンポの遅いバラード曲が無いのに、落ちついた雰囲気もある。激しさもあるのだが、あまりドラムが印象に残らない。これは録音のせいもあるかもしれない。

じっくり聴いた感じ

Cool Struttin’

テンポが遅め(110ぐらい)で落ち着いた印象のブルース。メジャーなのかマイナーなのかはっきりしない中性的で怪しげな雰囲気が非常に良い。クラークのヴォイシングにその秘密があるのだろう。管楽器ソロの後ろでとても印象的で積極的なコンピングをしている。そのコンピングをモチーフとして使うファーマーのクールなソロが秀逸。ファーマーは16分音符より短い音をほとんど使っていない。チェンバースは、テーマではかなり動きがあり、ソロの序盤は2ビートにしたり、色々を変化をつけているのがいい。しかし、アルコによるソロはどうかと思う。ベースソロはたった1コーラスと短いもので、1コーラスのウォーキングベースでタメを作った後でテーマに戻る。しかしこのウォーキングベースが2拍後ろにズレる。そのズレはクラークのバッキングを聴くことで即座に修正されている。このベースソロは必要だったのか?特にその前のクラークのソロの終わらせ方が秀逸なだけに、そのままテーマに行ったらバッチリだったのに、という気がしてならない。しかしそれだと、”Hot Struttin'”になってしまうという事か。クールに抑えてテーマに戻りたい、という意図だったのかもしれない。

Blue Minor

AABA形式で32小節のシンプルな曲。全体的に哀愁が漂うが、特にリズムが変わるサビの悲しげな雰囲気がよい。コード進行がブルージー(G7 → C7 → Fm)で、同じ繰り返しが多いので単調なアドリブになりやすい曲である。マクリーンのソロは考えながら吹いているのか、喉の奥にフレーズが引っ掛かって出てこないように聴こえる場面が前半にあるが、後半は持ち直して情熱的なマクリーンらしいフレーズが飛び出す。ファーマーのソロは本当に素晴らしい。こういった雰囲気のソロを得意としているのだろうか。彼はまた、モチーフ展開が上手くシンプルな曲でも平坦にならないのだろう。いいソロをするので自然とクラークとフィリージョーのコンピングがモチーフに反応して活発になっている。

Sippin’ at Bells

マイルス・デイビスがチャーリー・パーカーと一緒に仕事をしていた頃に作ったアップテンポ(213)のブルース。マイルスの曲ではあるがパーカーの影響は大きい。このアルバムでは哀愁のあるクールでファンキーな曲が目立つが、この曲はホットなビバップ曲である。ブルースと言っても細分化されたコード進行のモダンな曲なので起伏の激しいビバップフレーズを期待するところ。 構成はクラークが7コーラス、マクリーンとファーマーが8コーラスのソロを取る。その後チェンバースの2コーラスの短いソロがあり、その後またマクリーン、ファーマー、クラークが2コーラスの短めのソロをしてテーマに戻る。長々とソロをするより2回に分散してソロをする方が、聴いてる方は変化があっていい。 さて、アップテンポでコードチェンジの激しい曲なので、これまでの曲のように簡単ではない。はたしてテーマのコード通りにアドリブをしているのか?答えは「最初のちょっとだけ」である。長いソロを取るクラーク、マクリーン、ファーマの3人とも、最初の2コーラスぐらいは転調の激しいコードでアドリブをしているが、後は普通のブルースのコード進行に戻っている。これは好みの問題だが、僕は色々なハーモニーを見せてくれた方がいいと思う。チャーリー・バーカーの時代にブルースのハーモニーは細分化され、様々な代理コードで置き換えられ複雑になったと同時に、様々な可能性が見出され面白くもなった訳である。と言う訳でファーマーの最初の2コーラスは特に素晴らしい。このようにハーモニーを感じることの出来るフレーズを聴きたい、と思うのである。 あと、チェンバースはなぜアルコでソロをするのだろうか。ソロ入りとソロの後ベースの音が鳴っていない空白が出来る。これは弓を持ったり離したりする必要があるからだろう。最後になったが、フィリー・ジョーのドラムは終始かっこいいので注目して聴いてみよう。

Deep Night

哀愁の漂うマイナー調ながらテンポは186で軽快な曲。テーマは管楽器が入らずにピアノトリオで演奏される。その為、フィリー・ジョーは最初ブラシを使っているが、ピアノソロが終わりファーマーがソロに入るところでスティックに持ち変えていて、曲の華やかさが変わる。これがシンプルながらいい演出効果をもたらしている。クラークとファーマーは持ち味を出したソロをするが、ここで特筆すべきはマクリーンだろう。リーダーのクラークより長い4コーラスのソロを取る、本当によく歌っている。泣き節というか、本当にこの曲の雰囲気にピッタリである。誰なのかわからないが、気持ち良くなって「う~っ」と唸っているのがかすかに聴こえる。フィリージョーがノリノリのコンピングをしているので彼かもしれない。ただ、この声にびっくりして何か考えたのかフレーズが出てこない場面がある。マクリーンの素晴らしいソロの後、またピアノソロが1コーラスだけ入り、ドラムソロが1コーラスある。フィリージョーはノリノリで、いいソロをする。しかも時間を測ってみて気付いたがタイムキープが完璧である。その後テーマに戻るが、ここではブラシに持ち変えずスティックのまま演奏している。この曲はイントロもいいし、テーマの後のインタールードも効果的でエンディングもいい。完成度が非常に高い1曲。

Royal Flush

煌びやかなイントロとテーマメロディを持ったAABA形式の曲だが、サビに哀愁があるのがソニー・クラークの曲らしい。テンポは179。イントロとエンディングは同じメロディだが、イントロは6小節となっている。テーマのメロディはシンプルな同じモチーフを繰り返すのでなじみやすい。曲はシンプルである。テーマが終わるとマクリーンからソロに入るが、あまり調子が良くないのかフレーズが途切れ途切れだったりする。次のファーマーは好調で、やっぱりモチーフ展開のソロである。クラークも付き合う3コーラス目が特に印象的である。

Lover

テンポ300!の激しい曲。ドラムによるイントロで始まる。そしてリーダーなのにクラークのソロはなし。AABA形式で各楽節の最後の4小節はドラムブレークになっている。要するにドラムが主役の曲である。サビは4拍3連という3連符を4個づつグルーピングしたもので一種のポリリズムである。詳しくはこちらを参照。12小節が4拍3連で、のこり4小節は元に戻ってドラムのブレークである。テーマが終わるとマクリーンのソロだが、こんなに早いテンポをものともせず素晴らしいフレーズが飛び出すが、後半出てこなくなるのが惜しい。ファーマーのソロは途切れることは無いが、最後の方はモゴモゴしてしまう。このテンポは相当難しいだろう。その後ドラムソロを経てテーマに戻る。エンディングもドラムが主役である。こういうのもかっこいい。

アルバムを通しての印象

クラークのピアノは、他のピアニストと比べるとソロの音域が低い。ウィントン・ケリーやオスカー・ピーターソン等と比べた場合である。クラークはソロパートをほぼシングルトーンでアドリブするが、その音域が低いために「重いタッチ」などと表現される事がある。ブルージーとかレイドバックなフィーリングとか、そう表現される事が多が、それは8分音符を3連符ではなくイーブン寄りで弾く、というのもあるだろう。また、右手のシングルトーンを低い音域で弾く為、左手の音数が少なくなる。クラークの左手はかなり個性的。とにかく音量が小さくて控えめ。歯切れよくスタッカートで鳴らす事はない。しかしバッキングに回った時は積極的なコンピングを見せるタイプで、ソロイストの間を埋めるというよりは、煽るタイプである。特にアート・ファーマーのモチーフを展開するアドリブでは、そのモチーフのリズムパターンを使ってコンピングしているのが印象的である。

アート・ファーマーは、モチーフを展開させるソロが多く魅力的なアドリブをする。これはマイルスの影響が大きいという事だが、確かにマイルスもそういうタイプで、少ない音数で説得力のあるアドリブをする。ビバップとハードバップはどこが違うかと言えば、こういったところである。テンポが300の”Lover”ではモゴモゴした感があるのでクリフォード・ブラウンやディジー・ガレスピー程のテクニックは持っていないのか,,,というか彼らと比較するのは酷というもので、ファーマーは極めて優れたインプロヴァイザーである。

ジャッキー・マクリーンは、あまり滑らかさというものが無い。しかし非常に魅力的である。アルトサックスのアーチストは間違いなくチャーリー・パーカーの影響下にあるが、パーカーのような滑らかさはない。これは意図的なものであろう。というのも、ビバップ曲”Sippin’ at Bells”では序盤に滑らかで軽快なアドリブを見せるからである。しかしこの時代のアルト奏者はパーカーとは違う事をしなければいけない訳で、マクリーンはそういう意味で全く違った個性的な表現をしているのである。特に「泣き節」と呼ばれる、独特の情熱的なフレーズが彼の特徴であり、クラークの曲にピッタリとハマる。この「泣き節」は、『倚音(いおん)』の多用、と言う事になるであろう。ビバップやハードバップのコードトーンに基づくアドリブでは、1拍3拍といった強拍に、コードトーンを置くことが多い。しかし、ここに不協和なテンションやアヴォイドノートを使い情熱的なフレーズにする訳で、これはパーカーも得意としたし、それ以前の、例えばレスター・ヤングなども上手く使っていた、という事である。そこに特化したのがマクリーンで、彼の最大の武器であろう。しかし彼は、これを考えすぎる為か、たまにフレーズが出てこない時があるようだ。特にLPレコードには収められなかった2曲でそれが顕著であり、そこが彼の弱点であろう。これは、凡庸なフレーズを避けていると考える事もできる。打率の低いホームランバッターのようなものだろうか。

ソニー・クラークの曲と、彼のアドリブの哀愁、物悲しさなどをそのままコンセプトにしたようなアルバム。これはプロデューサーのアルフレッド・ライオン、録音エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーも含めた全てのメンバーが、同じ方向を向いて作り上げ、その結果素晴らしい作品が生まれた、という事だろう。フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムは結構激しい方だが、あまり目立たないのはそういう理由からだろう。

分析

ソニー・クラークのコンピング

“Cool Struttin'”には、メジャーなのかマイナーなのかはっきりしない中性的で怪しげな雰囲気があるのだが、その要因を考えるとクラークのコンピングにあると思われるので、ちょっと音をとってみた。するとこうだった。

ブルーノートをピアノで表現する

これはブルース特有のヴォイシングで、管楽器ソロの時に弾いている。コードの長3度と短3度を弾いており、この短3度は♯9のテンションではなく、ブルーノートを表現するためのものである。ちなみにこれはクラーク特有のものではなくて、ブルースでブルーノートを表現する時に前の時代からよく使われいたヴォイシングである。詳しくは以下の記事を参照してください。

『ブルーノートスケール』

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