Saxophone Colossus / Sonny Rollins
2017/9/30
2018/4/24
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モダン・ジャズの大傑作。豪快にメロディアスに吹きまくるロリンズ、ローチ、フラナガン、ワトキンスも素晴らしい。
Album Data
サキソフォン・コロッサス / ソニー・ロリンズ
Saxophone Colossus / Sonny Rollins
Track Listing
- St. Thomas
- You Don’t Know What Love Is (Gene de Paul, Don Raye)
- Strode Rode
- Moritat (Kurt Weill, Bertolt Brecht)
- Blue 7
Except where otherwise noted, tracks composed by Sonny Rollins
Personnel
- Sonny Rollins – tenor saxophone
- Tommy Flanagan – piano
- Doug Watkins – bass
- Max Roach – drums
Recording Data
- Recorded on June 22, 1956.
- Supervision by Bob Weinstock.
こんな方におすすめ
すべての人に自信を持ってお薦めできる。大名盤の割にシリアスな感じがなく聴きやすいので、テナーサックスのモダン・ジャズ入門としておすすめ。
さらっと聴いた感じ
大名盤なのにとても聴きやすい。なのに何回聴いても飽きない。ロリンズの滑舌のよい豪快なフレージングが気持ちいい。ローチのドラムソロはポリリズムが楽しくまとまりがある。フラナガンのピアノは端正で洗練されている印象。ワトキンスの力強いサウンドもいい。録音エンジニアはルディ・ヴァン・ゲルダーになっているが、ピアノとベースの録音レベルが低い。しかし実際ジャズを聴きに行くとサックスやドラムは大音量の楽器である。むしろリアルに録音されいると解釈し「実際はだいたいこんな感じだなぁ」と思って聴くといい。
じっくり聴いた感じ
St. Thomas
親しみやすいメロディを持つカリプソのリズムで陽気な雰囲気の曲。1コーラスは16小節×2の32小節。テンポば208位で始まり、途中225位にまで速くなる。
16小節のドラムのイントロで始まる。次にテーマ1コーラス、ロリンズのソロが2.5コーラス、ローチのソロも2.5コーラス。そしてまたロリンズ、フラナガンが2コーラスづつソロをとり、テーマに戻るという構成。ドラムソロが曲の中心にあるが、これは結構珍しい。よく練られている構成である。
ドラムソロの前後でリズムが変化する。テーマと最初のロリンズのソロは、ベースは主に2拍づつのリズム、つまり2ビート。ドラムはハイハット以外はシンバルをほとんど使わず、テーマの区切りでちょっと鳴らずだけで、ロリンズのソロ中は全くシンバルは使ってない。そのため序盤は、スイングしつつも落ち着いた感じがある。
ロリンズのソロはメロディアスでありながら躍動感がある。この曲のメロディである4度音程のモチーフ変形から始まる。しばらくするとバップフレーズも飛び出す。シンプルなフレーズと複雑なフレーズが交互に出てくる。
次のローチのソロもよく歌っている。シンプルなリズムのモチーフを繰り返すので聴きやすい。ドラムソロが苦手だという人でもこれなら好きになれるかもしれない。1コーラスを32小節とするとロリンズはコーラス途中で終わっている事になるが、そういう事もあっての事なのか、ローチのソロは2.5コーラスになっている。
ドラムソロの後はリズムパターンが変わる。ベースは4ビートになり、ドラムはハイハットを派手に叩くようになる。これまでシンバルの音を控えていた事もあって躍動感が出て盛り上がる。テンポも元々210前後だったのが220を超えるようになる。
後半のロリンズのソロはより激しく情熱的なソロになるが、単純に音数を増やしたり音量に頼ったりするのではない。ここではモチーフ展開というよりはシークエンスを用いている。つまり同じモチーフを何度も繰り返すタイプのフレーズが挟み込まれる。そのバリエーションが豊富。8分音符6個からなるフレーズを繰り返すポリリズム的なフレーズもある。また、ここではバップフレーズの割合が増え、シークエンスとバップフレーズが交互に出てくる
ロリンズのソロの後はフラナガンのピアノである。これまた素晴らしい。バド・パウエルの影響があるのは間違いないが、そのスタイルはパウエルの単なるコピーではない。とても洗練されている感じがする。このソロは疾走感がありそれを伴ったままテーマになだれ込む瞬間がたまらない。
疾走感のある戻りのテーマは、そのまま終わるのではなくテーマの後半で落ち着きを取り戻す。これがまたよく考えられた演出でエンディングに向けての準備という事だろう。後テーマの後半16小節は最初のリズム、つまり2ビートに戻る。この2ビートに戻ったところで、テンポも10ほど落ちて最初のスピードに戻っている。
テンポとリズムをまとめると、テーマとロリンズのソロは2ビート、ドラムソロで熱気を帯びてテンポが10以上速くなり、以降は4ビートでノリノリとなる。フラナガンのソロから後のテーマのところにクライマックスがある。後テーマ半分のところでクールダウンしてテンポも元に戻す。「ソ・ド・シ・ド」とオチをつけるような終わり方をする為に落ち着きを取り戻しているのである。
やはり超名盤の超名曲と言うものはよく練られている。
You Don’t Know What Love Is
AABA形式32小節のマイナーバラード。テンポは73。曲のタイトルが上から目線である。そのためかシブい雰囲気になっている。
ロリンズの短いフレーズのイントロで始まり、テーマをサブトーンが多めのメリハリのある音で奏でる。ロリンズのソロは1コーラス半ある。原曲のモチーフも持ちだしながら情熱的に歌っている素晴らしいアドリブ。2コーラス目でハイハットの刻み方がダブルタイムっぽくなりリズムに変化が出てくるところもいい感じ。サビから入るフラナガンのピアノソロは半コーラスと短く、またロリンズのソロになる。ピアノソロの後は曲の頭になるはずだがサビになっている。サビが終わるとロリンズはテーマのメロディを吹き始め、ここで全体のボリュームがアップしてエンディングに備える。構成をまとめると
- テーマ(AABA)
- ロリンズのソロ(AABA AA)
- フラナガンのソロ(BA)
- ロリンズのソロ(B)
- テーマ(A)
- エンディング
となる。つまり戻りのテーマはコーラス前半のAA部分が削られている。これはバラードが冗長にならない為の工夫だろう。 そしてエンディングは、ドラマティックに完璧なロリンズである。ハッピーエンドではない。愛を知らないと幸せにはなれない、という事なのだろう。
Strode Rode
アップテンポ(250前後)のかっこいい曲。AABA形式(Aが12小節、Bが4小節)で1コーラス40小節である。
ロリンズは同音連打のフレーズを繰り出す事が結構ある。音程を固定してリズムだけでフレーズを構築するという試みである。その特徴を活かした印象的なメロディを持つ曲である。
イントロなしで、同音連打の印象的なモチーフのテーマで曲が始まる。次にロリンズのソロであるが、ここでフラナガンとローチが手を休め、ワトキンスのベースとロリンズのテナーだけになる。この演出がとてもかっこ良く効果的である。しばらくデュオ状態を楽しんでいると、ローチのハイハットが入ってくる。それからフラナガンが入ってくる。この瞬間がたまならい。ロリンズのソロは3コーラスだがピアノとドラムが加わってからは絶好調である。ソロ終わりは親しみやすいモチーフが出てくるが、フラナガンとローチが素早く反応してリズムを合わせている。
次にフラナガンが2コーラスのソロであるが、なぜか走りだす。250前後であったものが270ぐらいになっている。
さて次が問題の4バースチェンジである。 何が問題かと言うと、全部で96小節ある。1コーラス40小節なので変だ。これはミスだったのだろうか。というのも、この4バースに「あれ?」という戸惑いが出ていないように感じる。ハーモニー担当のピアノのフラナガンとベースの録音レベルが低いので、その戸惑いがわかりにくいだけかもしれない。もしミスだとするとリカバリーが凄すぎる。小節数を数えたり一緒に演奏したりしない限り気付かないレベルだ。構成が崩れて長さが変化している、というのは本来大事故なはずである。でも気付いている人はどれだけいるだろうか。
この後テーマに戻って終わる。長さが変であろうがテンポが走ろうが、名演は名演である。
Moritat
楽しげでリラックスした雰囲気の曲。テンポは166。ABAB形式32小節。
まずテーマ。2ビートで穏やかに始まる。
次にロリンズの伸びやかにソロ。曲のメロディを大切にしている。楽曲の持つ雰囲気と同じくマイルドで聴きやすい。
次にフラナガンのソロであるが、よく歌っていて素晴らしい。
2コーラスのピアノソロを楽しんだ後は、ロリンズとローチの4バースチェンジ。ロリンズはモチーフ展開のソロが多めになるが、シンプルなモチーフなのにそのバリエーションに富み、聴いていて飽きない。
4バースの後はそのままドラムソロに入るが、その出だしでワトキンスがかすかに音を出してしまうミスがある。
そんなワトキンスであるが、ベースソロがいい。またフラナガンが絶妙なコンピングをしているのがよくわかる。このアルバムはここ以外にベースソロがないので貴重。じっくり聴こう。
戻りのテーマは”St.Thomas”と同じく、コーラス前半が4ビート、後半から落ち着いて2ビートになる。そしてテンポを徐々に落としつつエンディングへ向う。エンディングはしっとりした感じでとてもいい。ワトキンスがアルコを使っている。
Blue 7
タイトル通り、ブルーな雰囲気を持つブルース。しかしファンキーさはあまり感じられず、モダンでクールな印象。全体的にヴォリュームを落として演奏しているが、どこか不思議な感じがする。このアルバムの中では、とっつきにくいかもしれないが、実は奥が深く面白い曲で、聴けば聴くほど味が出てくる。
ブルース形式であり、1コーラスはおそらく12小節x2回であるが、ソロは12小節単位でやっていると思われる。テンポは133のミドルテンポ。構成はややこしいのでリストにしてみよう。
- イントロ:ウォーキングベース
- テーマ:24小節。後半ソロっぽくなる。
- tsソロ:4回(12小節を4回。以下同様)
- pソロ:3回
- drソロ:?回
- tsソロ:2回
- テーマ :24小節。後半ソロっぽくなる。
- tsソロ:1回。小音量。
- pソロ: 1回。さらに小音量。
- 間奏:28小節!ウォーキングベースでフェードアウト?
- 4バースチェンジ:2回
- tsソロ?テーマ?:2回
- エンディング:ベースライン1回
要するに、テーマの後みんなでソロを回して再びテーマに戻ってフェードアウトに入って、ここで終わりかな~、と思わせておいて突然4バースで驚かされる。そのあとまた続く。ロリンズのソロだかテーマだかわからないのが24小節。最後ベースとドラムだけになってフェードアウト、さらにドラムだけ1小節で本当に終わる。かなり変な個性的な構成である。
しかし演奏の方はと言うと、クールにボリュームを抑えながらのソロはどれも素晴らしい。最初のロリンズのソロはいつも通り素晴らしい。隙間の多いフレージングだが、絶妙なフラナガンのコンピングが入るのでその隙間をじっくり聴こう。
フラナガンのソロもいい。ローチのソロもよく歌っている。なぜかドラムソロの最初の4小節だけロリンズが入っている。4バースと思わせておいてのドラムソロという感じ。これはロリンズが間違えたのだろうか?
ロリンズのソロの後テーマに戻るが、ここで音量が大きくなる。クライマックスはここだろう。盛り上げようという意志が感じられる。
その後フェードアウトっぽくなり、またしても問題の箇所である。間奏部分が28小節ある。なぜ4小節増えてるのだろうか。ワトキンスが間違えたのだろうか。これまた解せないのだが、おそらく誰も気づかないからOKなのだろう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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