Roll Call / Hank Mobley

ノリノリで楽しく聴きやすいハードバップアルバム。モブレーとハバードのバップフレーズと、凄腕揃いのリズムセクションのサポートが素晴らしい。

Roll Call / Hank Mobley
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Album Data

ロール・コール / ハンク・モブレー
Roll Call / Hank Mobley

Track listing

  1. Roll Call – 10:33
  2. My Groove Your Move – 6:07
  3. Take Your Pick – 5:27
  4. A Baptist Beat – 8:54
  5. The More I See You (Warren, Gordon) – 6:47
  6. The Breakdown – 4:57
  7. A Baptist Beat [alternate take] – 9:42 Bonus track on CD

Except where otherwise noted, tracks composed by Hank Mobley.

Personnel

  • Hank Mobley – tenor saxophone
  • Freddie Hubbard – trumpet
  • Wynton Kelly – piano
  • Paul Chambers – bass
  • Art Blakey – drums

Recording Data

  • Recorded November 13, 1960
  • Producer Alfred Lion

こんな方におすすめ

楽しいノリノリの曲ばかりなので、元気の出るアルバムである。典型的なハードバップのサウンドで、癖も無く聴きやすい。6曲中5曲がモブレーによるオリジナルであり、彼の書く曲は親しみやすい曲が多いので、さらっと聴く事が多い方にもおすすめ。

さらっと聴いた感じ

モブレーのテナーは、ちょっとモゴモゴした感じがあり、ハバードはテクニシャンという事らしいが、少し音程がズレたりリズムがズレしている箇所もある。しかし管楽器の2人の出てくるフレーズはよく歌っているしキモチいい。そしてウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、アート・ブレイキーというリズムセクションの3人が強力で素晴らしいサポートをしている。

個人プレーの凄さはないが、5人の作りだすサウンドの心地よさは絶品である。

じっくり聴いた感じ

Roll Call

イントロからテーマの流れが印象的でかっこいい曲。AABA形式32小節。テンポは256~260。ラテンフィールの8小節のドラムの後16小節のイントロ、テーマの後ソロに入って行く。モブレーのアドリブはこのアルバムでは例外的に長く、7コーラスもある。しかしフレーズのバリエーションが豊かで飽きる事なく聴ける。ハバードもそれを引き継いでソロの出だしは素晴らしいが、5コーラスと長丁場のためか後半ダレ始め、フレーズの間隔が空いてくる。しかしここぞとばかりにブレイキーの煽りとそれに呼応したケリーの絶妙なサポートが入る。ケリーらしくコロコロとしたシングルトーンのピアノソロの間、ブレイキーはドラムの音量を落としリムショットやライドシンバルを使ったコンピングになる。次にドラムソロに入るが、この長さがよくわからない。3コーラスだと思うが、それにしては短い。つまり曲のどの部分を叩いているのかロストしたような状態になる。しかし、その次テーマに入るところはピッタリと息が合っているのが不思議。

My Groove Your Move

憂い、哀愁の感じられるファンキーなブルース形式の曲。マイナーブルースのようだがコード進行は一般的なものとは少し違うようだ。ブルージーで哀愁を帯びているので、モブレーも情熱的なソロになっている。でもやっぱりこういう曲はケリーの相性が良い。テンポは145とミドルテンポである。テーマの後に印象的なインタールードが8小節付け加えられている。またソロの長さだが、モブレーとハバードは4コーラス、ケリーは3コーラス、チェンバースは2コーラスしかなく短い(12小節1コーラスとする)。これは曲の長さや聴きやすさ、といったものを優先したからだろう。実際にハバードのソロなどは、もっとソロをしたい~という感じで途切れたような終わり方のため、ケリーのソロ入りがおかしくなっている。ケリーのピアノはモチーフの展開がすばらしい。それを受けてかチェンバースのソロもモチーフ展開をしていて、これが心地よい。ハバードのソロは休符が多めだが、その時のケリーのサポートが素晴らしい。またブレイキーはモブレーの時はそれほど煽っていないが、ハバードの時には結構煽っている。ブレイキーにしてみれば、ハバードの方が世話の焼ける子なのかもしれない。

Take Your Pick

とてもシンプルで親しみやすいメロディーを持った、明るくて楽しげでノリノリのいい曲。そんな曲だから全体を通してブレイキーが元気でよい。特に後のテーマなどは、はしゃいでキャピキャピである。AABC形式で16小節、それが繰り返されて32小節が1コーラス。テンポは202ぐらい。構成はテーマの後モブレー、ハバード、ケリーが2コーラス、チェンバース1コーラスのソロをとる。やっぱりここでもモブレーのすばらしいビバップフレーズが炸裂している。彼のフレーズは、あまりパーカー的ではないように感じる。というのも半音やアプローチトーンの出現の割合が少ない。これは調性外の音、アウトサイドの音(=強烈に不協和な音)をあまり使わない、という事につながり、おそらくそれが彼独特のマイルドさにつながるのだと思われる。ハバードは、この曲が一番調子が悪いかもしれない。ピッチの狂った音が多い。しかしフレーズは良い。そのバックでブレイキーは煽る煽る。しかしケリーのピアノソロに入ると、ちゃんとリムショットと繊細なスネアで音量を落としつつ、いいコンピングをしている。やっぱり只の爆音ドラマーでは無い。

A Baptist Beat

AABA形式の32小節、リラックスしたムードでコール&レスポンスのミドルテンポ曲。最初はテンポ142ぐらいだがハバードのソロあたりから走り出し最終的に153ぐらいになっている。ソロの全体的な印象はファンキー。それぞれがブルーノートを意識したフレーズをちらちら見せる。尚、各ソロの最初1コーラスだけはコール&レスポンスを持続させる。これは事前に打ち合わせていた決め事だろう。そしてもうひとつの決め事があるようだ。ソロの終わりはちゃんとオチを付け最後の1小節はブレークというものだ。しかしハバードだけ変なオチになっているのが面白い。

The More I See You

AB形式32小節で、マイルスの第一期黄金カルテットの、「リラクシン」に入っててもおかしくないぐらいリラックスした演奏。少しクールとも言える。そのためかテンポはずっと160を保つ。やっぱり熱くならなければ走らないのだろうか。テーマはハバードは入らずモブレーの1ホーンである。その分ケリーのピアノがいい感じのコンピングをしている。特に終わりのテーマは積極的で良い。この曲だけハバードはミュートをつけ、その分余計にマイルスのクインテットっぽく聴こえる。面白いの事に、この曲ではブレイキーがおとなしい。すごくおとなしい。モブレーのソロの時にリムショットやシンバルでいい味付けをしているが、ハバードのソロではほとんど何もしなくなる。全体を通しておしとやか。モブレー「ちょっとマイルスのクインテットっぽくやってみようか」ハバード「おもしろいなそれ、おれミュートにするわ。」ブレイキー「じゃあ俺は柄でもないけどクールに挑戦してみるか」といった会話があったのかもしれないと妄想を掻き立てるいい演奏である。

The Breakdown

テンポの速いブルース。ノリノリで少し激しい。8小節のイントロがついてるが、これが曲の印象と違って怪しげ。こういうイントロはやっぱり効果的だと思う。この曲だけtpからソロが始まり、2ndリフと4バースで盛り上げる。こういった工夫が他の曲にあまりなかったので、アルバム通して聴いた時によい印象になる。ソロはハバード、モブレー、ケリーが4コーラス(1コーラス12小節とする)、その後2ndリフが2コーラス、4バースが3コーラス、ブレイキーのソロが2コーラスでテーマに戻る。テンポは235くらいで始まるが、やっぱりホットな演奏は少し走るのか、ピアノソロあたりから240になっている。短い曲だがよく纏まっていて後味が良く、アルバムのラストに相応しい。

アルバム通しての印象

全曲においてモブレーのフレージングが素晴らしく、フレーズのバリエーションと歌心に優れたテナーだと思った。パーカー的なフレーズは、例えばアプローチトーンなどは少なめなのがマイルドの要因ではないだろうか。モチーフの展開が少しありハードバップ的である。ハバードはテクニシャンという事になっているが、しばしばピッチの変な音を出したりリズムもズレたりする事もある。しかしフレーズはモブレーと似ている。時折フレーズの間隔が空くが、そこをケリーとブレイキーがここぞとばかりに絶妙にサポートするので、フレーズの間というものは逆にある程度あった方がいいのではないか、と思うほどである。ウィントン・ケリーのピアノはソロの音域が高めでほぼシングルトーンである。ノリはよく跳ねるタイプでブルースも得意としている。特にハバードのソロの時にコンピングが冴えてている。サポート大魔神のケリーと煽り大魔神のブレイキーによって、ノリノリのアルバムになっている。6以外はソロの回し方や構成は至ってシンプル。楽曲構成の工夫はあまり見られないが、ファンキーな2、4、ややクールでリラックスした5など変化があり、曲の並びは練られているので飽きずに最後まで聴ける。

分析

“My Groove Your Move”のコード進行について

ブルースのようだが、ちょっとコードが違うようなので調べてみた。

"My Groove Your Move"のコード進行

マイナーブルースっぽいが、7~8小節にドミナントのD7があるので、これをブルース形式と呼んでしまうと間違いかもしれない。しかし12小節だし7、8小節以外はマイナーブルースと同じなので、ブルースっぽい事に違いはない。4小節にセカンダリードミナントのG7を入れた方がいいかもしれない。

“A Baptist Beat”のイントロ

ウィントン・ケリーによる小気味良いイントロを耳コピーしてみた。

"A Baptist Beat"のイントロ

サブドミナント(IV)であるB♭から、D-7まで上がって下りてくるのが印象的。パッシング・ディミニッシュもある。G7のところで、ブルーノート(B音)とルート(F音)を重ねているが、これがとてもブルージーである。7小節目をコール・アンド・レスポンスにして曲に合わせているので、すんなりテーマに入ることが出来る。

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