ジャズの聴き方

ジャズの聴き方と言っても自由に聴けばいいんですが、やっぱりジャズはとっつきにくいと思います。名盤と言われてるアルバムを手に入れて聴いてはみたものの、「なんだかな~」と聴くのをやめてしまうことがあるかもしれません...

なんともったいない!

そこで、どうすればジャズを好きになるのか?考えてみました。

…というか、これは僕のずっと昔からの聴き方です。

Step0:先入観をなくす

音楽だけに言える事ではありませんが、先入観はなるべく無い状態で聴いた方がいいでしょう。

例えば、映画の予告編というのがあります。あれは絶対に見ない方がいいです。予告編でだいたいどんな映画なのかわかってしまい、その分、見た時の衝撃や感動が薄くなります。本編を見ている時に、ああ、これ予告編でみたシーンだな、とか思ってしまった経験ないですか? 映画の予告編は、興味を持ってもらい映画館に足を運んでもらう、その為に「面白さ」という身を削っている訳です。さらに、この先入観を徹底的に無くしてしまうのであれば、監督や出演者等のスタッフ、映画のタイトルも伏せてしまうべきです。タイトルは流石に無理だと思いますが、要するに何も予備知識は無い方がいいでしょう。

これが音楽の場合だと、ミュージシャンの名前も曲名も知らない状態で聴く、という事になります。

実際、クラシック曲の多くは「交響曲第何番」「ピアノ協奏曲第何番」というように番号で管理されています。「運命」とか「田園」といったものは、後で付けられたものです。全く余計な事をするもんですね。そういったものは、売るためにやってる事なので無視するに限ります。同じ理由で、ジャズのライブでは普通、曲を演奏した後で曲名を紹介しています。思慮の足りないアマチュアは演奏する前に曲の紹介をしていることがありますが..。

Step1:さらっと聴く

ジャズはしっかり聴かないとダメだ、みたいに思ってる人いるかもしれませんが、僕は必ずしもそうではないと思います。まずは他のジャンルの音楽と同じような聴き方を敢えてするべきだ、と考えます。普通の聴き方をした時の判断を大切にしたいからです。聴き手が常に積極的に聴いてくれるという前提で音楽を作るアーチストは傲慢なのでは?とまで思ってます。とにかく、ながらでいいので流してみましょう。じっくり聴くのはその後です。

ちなみに、さらっと聴いた時の感想、印象は各々のレビュー内の「さらっと聴いた感じ」に書いています。

何を聴く?

僕が新しい音楽を探す時に一番参考になったのは、音楽好きの意見です。どこぞのサイトとかジャズの専門雑誌とか、そういうのもありますが、それ書いてる人には利害関係があるはずです。ジャズに限らず音楽好きは結構います。CDならば少なくとも500枚ぐらいは持っているでしょう。そういう人が利害を取り除いて本当に好きだ、というものは大抵アタリです。

当サイトは僕が個人的におすすめできる音楽のみを紹介しています。本当に自信を持ってお薦めできるものですが、それでも僕の好みが反映されたものになっています。音楽は個人的なもので必ず好みがあると考えます。ですので、好きになれなかったアルバムは何度も聴いていたとしても紹介できません。アーチストが全力で作り上げた作品を自分の好や理解できる範囲で批判したり貶したりしても何もいいことはありません。好みでないものを紹介し貶したりしても誰も得をしないでしょう。

何をしながら聴くのか?

仕事や勉強だとあまり意識が音楽に行かないでしょう。音楽が仕事や勉強の効率を上げるという説が昔はありましたが、今は否定されています。通勤、通学中にヘッドホンで聴くのはあまりおすすめできません。トランペットやシンバルの高音域は激しく音が漏れます。また電車の騒音はウッドベースの音をかき消してしまいます。
食事中は結構、音楽に集中できます。あと、洗いもの等の簡単な作業中、車の運転中、読書中もいいです。寝る時もいいのですが、音楽に集中して寝れないのは困るし、寝てしまうと聴けないし、意味がわからなくなります。。

音源

音源はアルバム単位をお薦めしますが、自分でプレイリストを組んでもかまいません。別テイクがあるものは、再生しない方がいいのですが、さらっと聴く段階ではどちらでもいいです。再生時間も気にする必要ありません。常にかけておく訳ですから。

オーディオ

オーディオはちょっと注意があります。ウッドベースは小さなスピーカーだと鳴らないので、ジャズは他のジャンルと比べてスピーカーの口径の大きなものが必要になります。しかしそんなに高いものは必要ないと思います。

まじめに聴かなくてよい

とくに自分から能動的に聴こうと努力する必要はありません。このように、何か音楽が流れているBGM状態をいつも作りだす、という事が重要です。でないと忙しい人は音楽を聴く時間を作れないでしょう。要するに、ジャズも他のジャンルと同じように聴いていい訳で、最初から熱心に聴く必要はありません。

繰り返し聴く…ただし1日1回

1週間くらい毎日流してみましょう。ただし1日に1回しか聴いてはいけません。同じ音楽を同じ日に繰り返し聴くのは禁止です。どんなに心地良くてもリピートしてはいけません。また明日のお楽しみ、という訳です。同じ日の2回目以降はどうしても良さが落ちるからです。

好き嫌いの判断

ただ、ジャズに限った事ではありませんが、長く聴けるホンモノの良い音楽は、ある程度難しさがあります。第1印象があまり良くない事があるかもしません。しかし、あまり慣れていない人は色々違和感があって、何回か聴いたけど好きになれない、と思うかもしれません。これはジャズに限らず新しいモノに出会った時の普通の反応なので、それで判断してしまわないように注意が必要です。なのでまずは10回ぐらい、つまり10日ぐらいはBGM的に流して聴いてみましょう。

それでも好きになれない事はあると思います。名盤中の名盤だと言われているが、好きになれないなぁ、と。しかし、そんな場合でも1カ月後、1年後に好きになる事があります。僕は何度もそんな体験をしています。人間も音楽も第1印象ほど当てにならないものはありません。その好き嫌いの要因は、曲なのか演奏者なのか、アレンジや構成など色々あると思います。例えば、ある曲が好きなれなかったとしても、他のアーチストが演奏しているのを聴いて、その曲を好きになることもあります。あるアーチストの印象がよくなくても、他のアーチストと絡んだ時に好きになる事もあります。

とにかく、性急に好き嫌いの判断を下す必要はありません。

ちなみに昔…1980年代、90年代はCDやレコードが高かったので、好きにならないと勿体ない、という感情が強く作用したと思います。だから、あまり印象が良くなくても「なぜこれがいいのか?」と考えつつ聴いたりして、それが自分の音楽の幅を広げてくれました。近頃はどんどんCDやダウンロード音源の価格が下がって、簡単に音楽が手に入るようになりました。そうなるとジャズのようなとっつきにくい音楽は聴かれなくなる傾向があるのではないか、と危惧します。

このように、まじめに聴かないかわりに聴く回数でシリアスなジャズのとっつき難さを乗り切るわけです。

理解と好み

色々なよい音楽に出会うと、どんどん音楽の幅が広がっていきます。音楽に限らず、絵画、小説、映画などの芸術、芸能、また料理でも同じ事ですが、良いものを知ることで豊かになっていきます。自分が今まで知らなかった、聴いたことが無かったよい音楽ほど価値があります。しかし今まで体験したことが無いモノほど、とっつきにくいはずです。これは繰り返し聴くことで慣れてしまう場合が多いです。

それとは別に、色んな人に勧められた名盤とされるものなのに、何回聴いても好きになれない場合もあるでしょう。それは好みかもしれません。自分が良い作品を理解できないのか、あるいは単に好みなのか、この判断は難しいと思います。

こういった理由からも、好き、嫌いの判断は慎重にした方がいいでしょう。

Step2:じっくり聴く

普段はさらっと聴きでいいのですが、たまにはじっくり聴いてみましょう。軽く聴いてばかりいると、ちゃんと聴きたくなってくるはずです。じっくり聴いてみると、今まで気付かなかった事に気づいたりします。じっくり聴くことにより好きな音楽はより好きになるでしょうし、好きになれなかった音楽でも好きになる可能性があります。

時間は短く

じっくり聴く時は、あまり長くならないように注意しましょう。集中力の続く長さ…だいたい30分ぐらいがいいのではないでしょうか。昔のレコード時代のものならばLP片面づつ聴くようにするといいでしょう。アルバムというものは曲順が良く練られてるので、自分でプレイリストを組むのもいいですが、アルバム通りに聴いていく事をお薦めします。ただ、最近のCDは70分ぐらい収録されているものもあります。そういう場合は適当に分割しましょう。

オーディオ

オーディオは言うまでもなくある程度のモノが必要になります。もし用意できない場合は、耳に負担の少ない開放型のヘッドホンをおすすめします。これなら同居人にも文句を言われませんし、1万円も出せばかなりいい音が手に入ります。

じっくり

いいアドリブをしている人は誰か? 逆にダメな人はいるか? バッキングは適度にサポートできているか? ソロの順番や全体構成はどうなっているか? といった事に意識を向けながらききます。いいアドリブは歌っているものです。また各パート毎に聴くのもいいでしょう。色々変化しているはずなので、そこに注意を向けましょう。

聴きやすい方がいい?

ところで、さらっと軽く聴いてるだけでは好きになれない音楽がありますが、これは悪い音楽でしょうか? アーチストの人間性が出る面白い問題です。

軽く聴いて好きになる音楽は、ちゃんと人に聴いてもらえる事を意識して作っている、と言う事になります。打ち合わせやリハーサルを綿密に行い、聴いてもらいやすくする訳です。それは売り上げを気にしての事かもしれません。シンプルなフレーズのリフを入れたり構成を凝ったモノにしたり、そういう工夫が、軽く聞き流していても耳に残る訳です。こういったアルバムの作り方をしたのが、ブルー・ノートというレコード会社です。またマイルス・デイビスも売り上げを気にしていた人で、聴きやすくつくられているアルバムが多いと思います。これは聴き手が自分たちの音楽を積極的に聴いてなくても、聴かしてやるぞ、というアーチストの態度だと言う事もできます。

逆に軽く聴いて好きになれない音楽にはそいうった要素が少なく、積極的に自分の音楽を聴いてもらいたい、それが当然だろう、とアーチストが思っているのかもしれません。ちょっと傲慢な態度に思えますが、商業主義を嫌っている態度ともとれるし、聴き手に媚びないアーチストというも解釈できます。例えば、キース・ジャレット・トリオは軽く聞き流した時の印象は、普通のピアノトリオです。むしろ唸り声が気持ち悪いぐらいです。しかし、じっくり聴いてみると本当に素晴らしいです。ジャック・ディジョネットのドラムと、ゲイリー・ピーコックのベースとのやりとりも魅力的なので注目して聴いてみてください。

さらっと軽く聴いてるだけでは宝物を見逃してしまいます。そういう訳なので、軽く聴いてあまり印象がよくない場合でもじっくり聴いてみましょう。

ここで油井正一さん(ジャズ評論界の草分けにして第一人者)の言葉を拝借しましょう。

よくきく言葉に「ジャズは本質的に楽しい音楽だ。だから楽しくないのはいいジャズではない」というのがある。「楽しさ」という言葉の解釈が難しいところだが、手拍子足拍子で唱和するような楽しさを、いいジャズと悪いジャズの判定尺度に使ってはならない。立派なジャズの中には、そういう楽しさを持つものもいっぱいあるが、ジャズの歴史を揺るがすようなエポック・メーキングなアルバムはほとんど例外なく、そのような楽しさを持ち合わせてはいない。ジャズはその意味で非常にシリアスな音楽なのであるー

『油井正一のベーシック・コレクション126 ジャズ名盤物語』より

Step3:分析する

じっくり聴いていると、すばらしいアドリブはなぜ素晴らしいのか? 知りたくなります。演奏しない人は特に必要ありませんが、やってみても面白いと思います。

テンポ

まずは、テンポを計測します。最近のメトロノームやメトロノームアプリでは、タップしておおよそのテンポを知ることができます。もっと正確に測るなら、テーマなど1コーラスの時間を測ります。これと小節数と拍子の数がわかれば、後は算数です。以下のように計算できます。

テンポ = 小節数 × 拍子数 × 60 ÷ 計測時間(秒)

例)ソニー・ロリンズの『セント・トーマス』の場合

この曲は4拍子で、テーマは32小節です。それにかかる時間は38秒でした。

テンポ = 32(小節) × 4(拍子) × 60 ÷ 38(秒) = 202.105

構成

ソロの順番やバース交換など、全体の構成はどうなっているのかメモをとります。

アドリブ

アドリブフレーズをまずはざっくりと評価します。チェックシートを作っておくと便利です。元々はジャズの先生が生徒を評価するのに使っていたシートがあり、それを参考に自分で作っています。ビバップ、ハードバップ用のチェック項目はこんな感じです。

全体

  • 音色
  • 緊張/緩和の全体的なバランス
  • 右手と左手のバランス(ピアノのみ)
  • テクニック
  • 特殊効果
  • 相互作用
  • 表現/個性/創造性

メロディ

  • フレージング(休みの長さ)
  • ダイナミックレンジ(強弱)
  • アクセント
  • アーティキュレーション
  • メロディの方向
  • メロディの音程
  • クロマティック/ダイアトニックのバランス
  • アプローチトーン
  • アルペジオ
  • スケール
  • 単純/複雑のバランス
  • メロディがハーモニーを示しているか
  • ガイドトーンによるハーモニーの連結はあるか (ヴォイス・リーディング)
  • モチーフの発展
  • 装飾音
  • フレーズとフレーズの関連
  • 協和音/不協和音のバランス
  • 代理コード

リズム

  • 正確さ
  • スイング感、ノリ
  • 音符の長さ
  • リズムの多様性
  • グルーピング
  • リズムの層
  • フレーズの配置の多様性

このシートを3段階でも5段階でもいいので、先生になったつもりで評価します。また、このシートは自分のアドリブを録音しておいて反省する(落ち込む)のにも使えます。

各パート毎に聴く

パート毎に聴きます。ソロイストの後ろで何をしているのでしょうか?そう意識しながらピアノ、ベース、ドラム等をそれぞれ聴くことになります。普段さらっと聴いているとベーシストでもない限りベースをしっかり聴いてないと思います。

イントロとエンディング

面白い、想像的なイントロやエンディングがあったらメモしておきます。曲の雰囲気と全然違う事もありますし、ベタなものもあります。

耳コピー

場合によっては耳コピーしてみましょう。耳コピーとは、音を聴きとり譜面にする作業です。正式にはトランスクライブ(transcribe)とも言うようですが、巷では耳コピと呼ばれています。専用のソフトやアプリを使う事になります。これは結構時間がかかります。

演奏してみては?

さらに興味をもった方は、楽器を初めてみてはどうでしょうか? お金も時間もかかりますがやっぱり楽しいです。下手同士でも音を合わせて初めてアンサンブルを体験すると感動します。またジャズのプレイヤーが如何に難しい凄い事をやっているのかを知ることができます。

ジャズの聴き方のまとめ

  1. 普段はさらっと聴く
  2. たまにはじっくり聴く
  3. 知りたくなったら分析する
ページトップへ